現在、日本脳炎ワクチンの勧奨接種の中止(接種を勧めることを控える)が続いています。これは昨年5月に始まりました。マウスの脳を用いた現在の日本脳炎ワクチンとそれを接種した後の重症* ADEM(アデム、急性散在性脳脊髄炎)発生との因果関係があるとの判断** が下されたことから、現時点ではより慎重を期するため、定期予防接種として現行の日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨は行わないよう、各市町村に対し厚生労働省が勧告を行ったものです。
この時点では1年くらいで組織培養法による副作用の可能性を少なくしたワクチンが開発される見込みなので、とりあえず待ちましょうということで現在に至っています。
しかし、この新しいワクチンがいつ使えるようになるのかは未だ発表がありません。小児科医の間での情報では2年から5年といわれています。これはあくまでも情報であり、厚生労働省は勧奨接種の中止を継続中で新ワクチンの開発時期については言及していません。しかし新しいワクチンが使用できるようになるまで2から5年かかるのであれば、その間なにもせずこのまま放置してはいけないのではないかと言う考えから、小児科医の間でも少しずつ現行ワクチンでの接種を行う医師もでてきています。昨年5月の勧奨接種の中止段階でも、厚生労働省は東南アジアなど日本脳炎の多発地帯に出かける予定があれば、十分な説明(副作用についての)を受け承諾書をいただいた上で現行ワクチンでの接種が可能であるとしています。宮崎県では当初(昨年5月)から現行ワクチンでの接種を継続しています。
私も昨年中はこの東南アジア方面に出かける人に接種を行っていたのですが、上記のように新ワクチンの見通しがはっきりしないので、最近は質問を受けた場合はI期接種からの間隔があき過ぎる場合や年齢が高く接種時期を過ぎそうな方には現行ワクチンでの接種を勧めています(勿論、最終判断は保護者です)*** 。現在の状況で注意しなければいけないことは、日本脳炎ワクチンは決して中止になったのではないことです。日本脳炎ワクチンは必要です。(中止になったと誤解している人たちもいるようですが)
このようなホームページで現在の日本脳炎ワクチン接種についてコメントするのは微妙で難しい面もあるのですが、このままではいけないと考え、今回あえて書くことにしました。文章だけで十分な情報を伝えるのは困難ですが、日本脳炎ワクチンが必要であることと現行ワクチンでの接種が可能であるとの情報は皆さんに伝えるべきと考えています。
* ADEM(アデム、急性散在性脳脊髄炎)とは
ある種のウイルスの感染後あるいはワクチン接種後に、稀に発生する脳神経系の病気です。ワクチン接種後の場合は、通常接種後数日から2週間程度で発熱、頭痛、けいれん、運動障害等の症状があらわれます。ステロイド剤などの治療により完全に回復する例が多く、良性の疾患とされていますが、運動障害など神経系の後遺症が10%程度あるといわれています。
** 日本脳炎ワクチンを接種したことによるADEMの副反応は、どれくらいあるのですか?
日本脳炎ワクチンの副反応としてのADEMは、70〜200万回の接種に1回程度、きわめてまれに発生すると考えられています。万が一発症しても通常は軽快し、その後の再発はみられません。
予防接種によると考えられるADEMでは、通常、ワクチン接種後数日から2週間程度の間に発熱、頭痛、けいれん、運動障害等の症状があらわれます。
*** 組織培養法による新しい日本脳炎のワクチンが承認されるまで、日本脳炎の予防接種は受けられないのでしょうか?
日本脳炎の流行地域(朝鮮半島、台湾、中国、ベトナムなど)へ渡航する者、蚊に刺されやすい環境にある者など、日本脳炎に感染するおそれが高い場合などで、本人又は保護者が特に希望する場合には、今回の措置と日本脳炎ワクチンの効果及副作用を医師から説明を受け、同意書に署名した上で現行の日本脳炎ワクチンの接種を受けることは差し支えありません。